横山のサッカー哲学は「体を投げ出してでも、何とかボールをネットに押し込むこと」だ。関東大学リーグ戦２部で２年連続得点王。早稲田を１部に昇格させる、そして夢だったＪリーグへ行く。夢の実現に向け、着実に階段を上っていた３年目の２０００年シーズン、横山にも早稲田にも思いもよらぬ試練が訪れる。

　「こんなに苦しんだ１年はなかった」と振り返る３年目。左足首ねん挫に苦しみ、チームも低迷。「何をやってもうまくいかない。フォワードなのに点が取れない。」責任を感じる横山。「僕が点を入れれば勝てるのに・・。」試合後、いつもうわ言のようにつぶやいていたという。

　１、２年と結果を残して迎えた３年目、横山には無意識に欲が出ていたのかもしれない。「もっと綺麗に、かっこよく点を取りたい」この思いが横山の歯車を狂わせていた。勝てないチームと、期待に応えられない自分。この最悪の状況の中で横山が苦しみ抜いて見つけたものは「形にこだわらない泥臭いサッカー。」それはまさに自分らしさだった。横山は、開き直った。

　こうして迎えた運命の入替戦、２０００年11月23日、西が丘サッカー場でワセダの笑顔を見ることはできなかった。部史上初の東京都リーグ降格、「名門」凋落。横山も泣き顔を芝に突っ伏し嗚咽した。

　オフに入り、以前から繋がりのあったＪ２大宮アルディージャから正式にオファーが来た。「プロ」か「早稲田」か、横山は悩んだ。部を１部昇格どころか都リーグに落としてしまった責任と「あと１年やってからでも遅くはない」との声に横山の心は揺れた。しかし「このチャンスを逃したら、夢だったＪリーガーになれないかもしれない」。苦しみ抜いた末に、横山は大宮入りを決断した。

　「早稲田での３年間にまったく後悔はない。この先何があっても、どん底の中で、苦しみもがいてつかんだ”がむしゃらに点を取る”という信念はプロに行っても変わらない、変えちゃいけない」ア式蹴球部での３年間は、横山のサッカー人生に揺るぎない自信をもたらしたに違いない。

　プロ入りを決定する際、横山は数少ない「学生Ｊリーガー」という道を選んだ。部には在籍できないが、早稲田には学生として残る。シーズンが始まれば遠征の日々だ。両立はたやすくない。だが「”さすが、プロは違う”と思われる学生になりたい」という。こんなところにもストライカーの負けん気が見え隠れする。過去には宮本恒靖（同志社大・Ｇ大阪）らがこの道から日本代表になっている。横山もそれを目指している。

　「とにかく、今は早く試合に出て、早く卒業したい。」そんな横山聡の笑顔に、スタジアムで、そして教室で会うのが今から楽しみだ。