● 駅伝の“現場”はどこに?
「箱根駅伝は、テレビで見るに限る!」。
のっけから現場観戦を否定するかのような表現で申し訳ないが、これは至極まっとうな言い分である。なぜなら、駅伝において現場は「点」に過ぎないからである。選手のスピードは意外も速く、目の前をあっという間に通り過ぎてしまう。しかも、現場では他校の情報や、選手の駆け引きなどレース全体の状況が、ちっともわからない。
「線」であるレースそのものを楽しみたければ、現場よりテレビ観戦の方が、断然いいに決まっている。しかし、それでもボクは、現場観戦をおすすめしたいのだ。断言。
「箱根駅伝は、現場で見るに限る!」
● 1年の計は、箱根観戦にあり。
箱根駅伝は、学生選手にとって1年で最も大切な大会だ。箱根のために、選手が1年間に走り込む距離は約1万キロ。そのすべてが、箱根で走る20キロ、1時間に凝縮される。出場するすべての選手が、1年間のピークを箱根駅伝に合わせてくるのだ。
沿道の臨場感もたまらない。ガードレール越しに埋める観客の声援と小旗の音が選手の通過に合わせて高まっていく。その大歓声の中を、ただ真っ直ぐに駆け抜ける選手。息づかいも、間近で聞き取れる。この心の昂ぶりは、何にも代え難い。その瞬間を現場で見ない手はない。「1年の計は、箱根駅伝観戦にあり」。こう言っても過言ではない。
● 選手とともに、全区間観戦。
「点」に過ぎない駅伝観戦であるが、ひとつだけ「線」を実感できる方法がある。
「箱根駅伝・全区間観戦」。往路5区・復路5区、計10区間のすべての地点でレースを観戦するのである。これは、「点」という現場を積み重ねることで、観戦の「点」をレースという「線」に変えることが出来るのだ。これはある種の「旅」だが、ファンならずとも楽しめる観戦方法ではないかと思う。
全区間観戦では、1つの学校に狙いを定めて、観戦することをおすすめしたい。なぜなら、全校をカバーしようとすると、どうしても先頭と最後尾の選手にタイム差が出てしまうため、残念ながら全選手をフォローすることができないのだ。
1つの学校だけを観戦するだけでは、レースという「線」は体感できないという方もいらっしゃるかも知れない。確かに一理あるが、1つの学校に焦点を当て、選手を全区間追い続けることで、“選手ともに箱根を走っている“という一体感が生まれる。
テレビとはひと味違った駅伝観戦、左手にはラジオを、右手には小旗を。もちろん使い捨てカイロも忘れずにいたい。
● その先にあるゴールへ…。
箱根駅伝、全10区間。すべての「点」を追い続けた先には、一体どんな「線」が見えるのだろうか。それはきっと、レースとは違う「線」。すなわち、1本の襷が描く「箱根の軌跡」という名のもうひとつの「線」に違いない。
さあ、沿道へ。冬の東海道を駆ける選手達の足音が、すぐそこに迫っている。
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