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復路総評

 往路の早稲田は3人が区間賞を獲得する快走を見せ、終始優位にレースを進めたが、数々のドラマを生み出してきた箱根の山で東洋大に大逆転劇を許し、2年連続の往路優勝を逃した。東洋大の往路初優勝の立役者である柏原竜二や早稲田の矢澤曜(教1)や三田裕介(スポ1)などのルーキー、そして山梨学院大のモグスや日本大のダニエル、竹澤健介(スポ4)らスーパーエースの活躍が目を引き、また、レース全体を振り返ると、駒澤大や東海大など常連校が低迷する一方で、予選会組の日本体育大、国士舘大らが上位に食い込む活躍を見せるなど大学駅伝「新時代」の到来を予感させる展開となった。冬晴れの空と山独特の寒さの中スタートした復路では、16年ぶりの頂点を狙う早稲田大、往路での勢いのまま更なる躍進を目指す東洋大を軸とする総合優勝争い、伝統校や新鋭校入り乱れてのシード権争いに注目が集まった。

得意の山下りでまさかの苦戦(6区)

 

今年の箱根は、33年ぶり出場の青山学院大や初出場の上武大など賑やかな顔ぶれとなった

 3年連続で早稲田の6区は「山下りのスペシャリスト」加藤創大(スポ3)。早稲田が最も自信のある区間であり、また2年連続の区間賞の期待もかかる加藤は、早速3.2km地点で東洋大をかわし上々の滑り出しを見せる。そのまま「58分35秒」という目標タイムを目指し、更に勢いを増していくかと思われた加藤に突然異変が起きる。6kmを過ぎ本格的な下りに突入した辺りから表情が歪み、脇腹を抑える仕草を何度も見せるようになり、ペースダウン。すると、その後は東洋大・富永と抜きつ抜かれつの熾烈なトップ争いを演じることとなる。本調子でないものの意地を見せる加藤は、平地に入った18.8km地点で執念のスパート。2位東洋大に18秒差をつけ1位で襷を繋ぎ、最低限の役割を果たした。


栄光への分岐点(7区、8区)

 

7区に登場したルーキーの八木。 来年度はエースの座を狙う。

 つなぎの区間である7区は、当日のエントリー変更で出場の八木勇樹(スポ1)。大学入学後、試合で思うように力を発揮できずにいる八木は、往路で活躍した同学年の矢澤、三田に続かんとばかりにスタートから積極的に飛ばしていく。しかし、序盤のオーバーペースが祟ったのか、11km過ぎ以降失速。一時は1分近くあった2位との差は最終的には12秒差となるなど、八木は区間順位こそ2位であったが、本来の力からするとやや物足りなさが残る箱根デビューとなった。また、7区終了時点で3位日体大と2位東洋大の差が3分31秒にまで開き、レースは完全に東洋大との一騎打ちの様相を呈し始めた。

 8区に起用されたのは中島賢士(スポ2)。2位東洋大とは12秒差で襷を受けた中島は、落ち着いた走りで先頭をひた走る。しかし東洋大・千葉にじわじわと追い上げられると、7.8km地点でついに逆転を許してしまう。粘りが身上の中島も、離されることなく千葉の背後にぴたりとつき並走状態のまま8区最大の難所、遊行寺坂に突入。照りつける強い日差しと高い気温が選手の体力を奪うコース終盤、先に仕掛けたのは千葉。16km付近でスパートをかけると、表情からも明らかに余裕のない中島を一気に振り切り、トップで戸塚中継所に駆け込んだ。結局中島は、東洋大とは45秒差の2位で後に控える上級生2人に襷を託した。また、激しい首位争いの傍ら、8区19.8km地点で城西大が無念の途中棄権となった。

一般入試組の意地の走りも、あと一歩及ばず(9区、10区)

 

念願の箱根出場を果たした三戸。 区間3位の力走であった。

 復路最長の9区を任されたのは、4年目にして箱根初出場となる朝日嗣也(教4)。朝日は、序盤の下りを利用して積極的に飛ばし、最初の4kmの間に東洋大・大津との差を15秒にまで縮めてみせる。追いつくのは時間の問題かに思えたが、相手の大津は前半慌てることなく力をため、14km過ぎからペースアップするクレバーなレース運びを展開。対する朝日も、終盤ペースが落ちながらも区間5位の走りでまとめたが、1位東洋大とは1分26秒差にまで開き、最終区を迎えることとなった。

 早稲田のアンカーは、朝日と同様一般入試から競走部の門を叩き、今回初の箱根路に挑む三戸格(政経4)。大会直前からの好調さを買われての出場となった三戸は、上級生らしい堅実な走りで東洋大・高見との差を少しずつながらも確実に詰めていく。悲願の優勝に向け、三戸が残り3km付近から最後の力を振り絞り更なる猛追を見せ、最終的には1位に41秒差にまで迫るが、あと一歩及ばずフィニッシュ。東洋大が初の総合優勝を飾り、早稲田は2年連続で2位に終わった。また、日体大や大東文化大、明治大など予選会からの出場となったチームがシード権を獲得する一方で、昨年の優勝校・駒澤大は13位に沈んだ。

来期に向けて

 第85回の記念大会のため、史上最多の23チームで争われた今年の箱根。予選会からの出場ながら3位に入った日本体育大の活躍や、優勝候補に挙げられながらも往路で大きく出遅れ、そのままシード権を逃した駒澤大などをみるに、今大会は駅伝の「流れ」の重要性を改めて認識させられる大会となった。出場校の力が拮抗しているため僅かな隙が命取りとなるのが近年の駅伝である。
 そんな中、目標に掲げていた16年ぶりの総合優勝を僅か40秒差で逃した早稲田。山での苦戦など幾つか要因は考えられるが、今回は、大会MVPにも選ばれた柏原竜二の作った勢いのまま復路も走り抜き、初優勝を掴んだ相手の東洋大を素直に褒めるべきだろう。 それに、初出場の1年生三人の活躍は大きな収穫であった。次回優勝を狙うためには、今回明暗を分けた5区「山上りのスペシャリスト」や、竹澤に代わる「エース」の育成が急務である。また、朝日、三戸のような一般入試組からのいわゆる「たたき上げ」の選手の台頭も待たれる。来期も、戦えるだけの戦力は十分整っている。尾ア貴宏(教3)新主将を中心に、チーム全体が更なる成長を遂げ、来年こそはエンジのWが頂点に輝くことを期待したい。

2009年第85回東京箱根間往復駅伝競走 復路個人記録

区間
氏名
学年
学部
出身
個人記録
区間順位
チーム順位

6区

3
スポ科
愛知・愛知
1.00.08
7
1

7区

1
スポ科
兵庫・西脇工
1.05.07
2
1
8区
2
スポ科
佐賀・白石
1.07.39
8
2
9区
4
教育
鹿児島・加冶木

1.11.57

5
2
10区
4
政経
福島・磐城
1.11.18
3
2
復路 計(順位)
 
2

※当日のエントリー変更:7区 蘆塚(商4)⇒八木(スポ1)
8区 猪俣(スポ2)⇒中島(スポ2)
9区 高原(人3)⇒朝日(教4)

 

(TEXT=岡崎聡、PHOTO=田辺里奈)

 

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