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シブヤ大学の講義の一風景 明治神宮の森もキャンパスになる
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そんな彼も就職活動をする時期がやってきた。「奥先輩のように、自分の信念を持って活き活きと仕事がしたい」働くことへの高いモチベーションがあった左京さんではあったが、いざ実際に働くとなると戸惑いもあったという。
「就職活動をすることになって、自分はどんな仕事にしようかと考えたんです。でも、特定の会社や業種が浮かんでこなかった。自分は何をすればいいのかなって。具体的な将来像が思い浮かばなかったんですよ」
そんな中で、唯一左京さんの胸のうちにあったのが、奥克彦さんのように『人のためになる仕事をする』ということだった。そこで、まず左京さんが考えたのが公的機関のような分野の仕事に就くことだったという。しかし冷静になって考え直したとき、彼の頭をある考えが過ぎる。
「社会を実践的に動かす、そんな仕事がしたい。だから、公的機関で仕事をするのもいいだろうと思っていました。でも、自分は社会のことが良くわかっているのだろうかと、ふと考えてしまったんです。公的機関で社会を動かす側に立ったとしても、自分は会社組織のこと、社会が動いている現場の状況を何も知らない。そんな立場の自分が、口先だけでものを言っても、ただの机上の空論っぽくなってしまうのではないか、と思ったんです。ラグビーに例えれば、口だけで何も出来ないプレーヤーのようになってしまうかもしれない。それは嫌だなと思ったんですよね。それならば、民間企業で働こうって。ビジネスの現場に身を置いてみよう、と思ったんです」
そこで左京さんは、唯一興味のあった海外での仕事を希望する。「最速で海外に行けるのは商社しかない」と住友商事への入社を決意。社会人としての第一歩を踏み出した。
ビジネスマンとしての生活。しかし、彼にも早々に転機が訪れる。
「会社に入って1年目は、部活の新入生のように右も左もわからない状態。仕事の実力をつけなければいけない上に、周りと信頼関係を築くことも求められる。とても大変だし、辛いことも多かった。でも、2年3年と経つにつれて、だんだん仕事に慣れてくるんですよ。そこで改めて考えたんです。自分はこれからどういう仕事をしていこうか、とかを」
学生時代にやりたかったこと。自分の可能性…。これまで余裕がなく、考えもしなかった想いが蘇ってくる。「これからの人生について、改めて考え始めた時期だった」と左京さん。
そんな中、彼の目に飛び込んできたのが、当時海外で多くの事例が出て来ていたNPOやソーシャルビジネスでの成功例だった。
「当時ワンガリ・マータイさんという女性活動家が、グリーン・ベルト・ムーブメントという環境保護の取り組みを行って世界的な評価を受けたり、グラミン銀行というところがマイクロファイナンスという手法でノーベル平和賞を受賞したり、ということが話題に上っていたんです。彼らが行ったのが、公的な機関が取り組んでいた社会的な課題をビジネスの手法を使って解決するみたいなことだった。
これを知った時、これらの団体の活動は僕が学生時代に考えてきたこと、やりたかったことにすごく合致でしているのではないかと感じたんですよ。奥克彦さんのように、人のために役立つ仕事でもあるし、なおかつビジネスにも関われる。すごく魅力的に感じたんですね」
この出会いが、左京さんの人生を変える。
その後、3年弱勤めた会社に辞表を出すことを決意。「この業界で働いてみたい」その想いを胸に、NPOに関する様々な事例を探した。
そんな時、知人の紹介で知り合ったのがソーシャルワーカー・長谷部健さんだった。長谷部さんは、ゴミ拾いの啓発活動を展開するNPO法人「green bird」の代表。従来までのボランティアの形とは異なり、市民・企業・行政が一体となって活動する新しい取り組み「シブヤミライプロジェクト」「はるのおがわプレーパーク」など、ユニークな取り組みで注目されていたNPOの第一人者だった。
「以前から、メディアを通じて長谷部さんの活躍ぶりを拝見していて、おもしろい取り組みをされている方だなと思っていたんです。そんな彼にお会いする機会があったので、自分の想いの全てを打ち明けてみたんですよ。『自分は会社を辞めて、こっちの世界で仕事がしてみたい』って。
そうしたら長谷部さんは、『おまえ、相当おもしろいヤツだなぁ』とおっしゃった。会社も辞めた上で、この仕事をしたいっていうのは、彼にとって相当珍しかったようで『俺でさえ、渋谷区の議員をした上で活動しているのに、君には今何もないのか(笑)』と。でも、そんな自分の熱意が通じたか『じゃあ、自分が今やっているNPOの仕事を手伝ってみるか』って言ってくださったんです。それで、会社辞めた翌日から事務所に手伝いに行ったんですよね」
この出会いから、左京さんが関わるようになったのが、シブヤ大学のプロジェクトだった。
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