応援部チアリーダーズ。その華やかに見える演技には、一言では語り尽くせない努力と苦労が隠されている。常に危険と隣り合わせの演技。「怖い」はタブーとされるこの世界において、彼女たちはいかにしてこの恐怖心を乗り越え、選手達に満面の笑顔で応援し続けるのか。今年、チアリーダーズをまとめる5人が、その笑顔の裏に隠された思いを隠すことなく語ってくれた。
第1回 心(精神)・芯(技術)・進(前進)
応援部チアリーダーズ新4年生
(写真左より)
小川久貴子 政経
牧屋麻子 教育 副将 チアリーダーズ責任者
井上美和子 人科
岡田ゆり 一文
奥野由紀恵 一文
佐藤真美 人科 取材した日は欠席
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「いきまーす」の声と共にテープレコーダーのスイッチが入る、この瞬間、彼女たちの表情が一変する。そして激しいダンスと、最高の笑顔でこちらに訴えてくる。はやりの言葉で言うなら「モード」が変わるというのだろうか、まるで多重人格「ジキル博士とハイド氏」のようなギャップだ。この表情が切り替わるの瞬間が溜まらなくいい。コール(声)とパフォーマンス(演技)が一体となったチアのステージはリズミカルで、気持ちがいい。
しかし、その裏には、常に危険と隣り合わせの演技がある。特に、アクロバティックな動きを多用する練習の時には、かなりの集中を要するため、こまめに休憩を取り、メリハリをつけて練習している。「”怖い”という言葉は部の中ではタブー。ひとりが怖がるとみんなが怖がってしまい、演技が畏縮してしまうんです(岡田)」。また、互いの信頼がなくては演技は成功しない。「トップを支えるベースやスポットは、落ちてくる人を完璧に拾わなければならないし、トップから落ちる人も下で支えてくれる人を考えて落ちないといけない。”落ち方”というのもあるんです。(井上)」。休憩の前には必ず集まり全員で「1、2、3、ブレイク」の掛け声。一転、部員の顔が緩む。とてつもない集中なのだろう、一斉に安堵がこぼれる。この掛け声は、パフォーマンス(演技)と同時にコール(声)を重視する、チアならではコミュニケーション作りのひとつとも言える。この休憩のタイミングを計るのも難しいという。まさに4年生の真価が問われるところだ。
一流のアスリートは、みな口を揃えたように「メリハリが最高のパフォーマンスを生み出す秘訣」と言う。それはなぜだろうか、その一端を「いつも、本番のつもりでモチベーションを保っています(奥野)」日頃に練習が”練習のための練習”になってはならない。それでは意味がない。つねに本番を想定した練習、だから気が抜けない。
ビデオを見て自分の動きをすぐフィードバックする。その度に集まって互いにアドバイスしあう。それを学年関係なく言いあう。イメージ通りに体を動かすためには、実際に自分の演技を確認するのが一番早いという。常に主観的な視点と客観的な視点を要求される。まるで、ドラマの撮影をしているかのようなカメラチェック。自分達がどう写っているか、そしてそれが観客に、選手達にどう伝わっているのかを確認するため入念にチェックする。テープが擦り切れるということはもちろんのこと、ビデオカメラが使い過ぎで壊れてしまうほどだという。「ストレッチから食生活、すべて、チアに捧げています。でも、その努力をステージでは一切見せないのが、私たちの哲学です。(小川)」
ダンスは全体で動き、表現するものではあるが、ひとりひとりのパートがしっかりできていないと統一感、一体感は生まれない。その中に個性を見い出していくことによって、自分らしさ、ワセダらしさが初めて生まれてくる。チアリーディングとは、そんなスポーツだ。
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