往路では、なかなかレースの波に乗り切れず、往路優勝を果たした東洋大とは6分5秒差の7位に終わった早稲田。レースは、東洋大・柏原による昨年に続く5区で大逆転劇を筆頭に、花の2区でのスーパールーキー村澤(東海大)や外国人留学生ダニエル(日大)の快走、古豪・明治大の序盤からの快進撃など「戦国駅伝」の呼び名に違わぬ激しい展開となった。そして復路では、東洋大の連覇がかかる総合優勝争い、そして熾烈を極める上位、シード権争いに注目が集まった。
『下りのスペシャリスト』不発(6区)
復路のスタートとなる山下りの6区は、早稲田が誇る「下りのスペシャリスト」加藤創大(スポ4)が4年連続で登場。「最低でも区間賞」という目標を持って挑んだ最後の箱根路だったが、走りに本来のキレはなく、故障の影響による調整不足の感は否めなかった。1位の東洋大と6分5秒差の7位でスタートした加藤は、4km以降から始まる得意の下りに入っても、思うようにペースが上がらない。すると13.5km地点では、芦ノ湖を1分11秒差でスタートした駒澤大・千葉にかわされ、8位に後退してしまう。後半に入っても加藤の足取りは重く、順位をさらに一つ落とし結局9位でタスキリレー。6区で上位を追い上げるという早稲田のシナリオは、無情にも崩れてしまう。また、加藤自身も区間16位に沈み、自身の有終の美を飾ることはできなかった。
早実コンビが見せた粘り(7区、8区)
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9区を走った中島賢士(スポ3)。
来年度は最上級生としてチームを牽引してほしい。 |
つなぎの区間と言われる7区。9位でタスキを受けた萩原涼(人1)は、序盤からハイペースで入り、青山学院大と城西大とともに7位集団を形成。その後15km付近まで集団を引っ張る積極性を見せた萩原だったが、後半はやや息切れし失速。それでも区間6位に踏みとどまり、順位も9位をキープしたまま戸塚中継所へ飛び込んだ。1年生ながら堂々とした走りを見せた萩原は、今後の飛躍を感じさせる上々の箱根デビューとなった。
前回、早稲田が逆転を許した8区に起用されたのは、三大駅伝初出場となる北爪貴志(スポ3)。東洋大が快調にトップをひた走る中、早稲田の北爪は青学大と熾烈な8位争いを展開。茅ヶ崎(8.9km)までに、前を行く青学大に難なく追いつくと、その後は両者の並走状態が続く。コース終盤の勝負所といわれる遊行寺の坂に入っても、互いに譲らず最後まで駆け抜け、北爪は青学大とわずか1秒差の9位でタスキリレー。順位こそ上げられなかったものの、7区終了時点で1分2秒あった6位までとの差を18秒にまで縮める力走であった。
箱根経験者も意地の走り(9区、10区)
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2年ぶりの10区を務めた神澤陽一(理工4)。
区間8位でまとめ、持ち味を発揮した。
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復路のエース区間と呼ばれる9区を任されたのは、3年連続で箱根出場となる中島賢士(スポ3)。夏以降大会への出場がなく、「レース勘」が心配された中島だったが、タスキを受けた直後から勢いよく飛び出し青学大を振り切ると、前を行く7位・明大の背中を懸命に追いかける。本調子ではないながらも終始粘りを見せた中島は、少しずつ前との差を詰め、ラスト3kmで見事に明大を逆転。7位に順位を上げてタスキを10区の神澤陽一(理工4)に託した。
最終10区。6位の城西大とは1分55秒差でスタートを切ったアンカーの神澤は、自分のペースを着実に刻み、ゴールへと足を進めていく。前後の選手の姿がなかなか見えない難しい状況での単独走となるが、神澤は持ち味の大崩れしない手堅い走りで最後まできっちりまとめ、後方からの追い上げにあうこともなく7位でフィニッシュ。上位入賞はならなかったものの、来年のシード権は獲得した。また、注目の優勝争いは、往路で作った貯金を活かしつつ、復路でも堅実な継走で1度もトップを譲らなかった東洋大が2位に3分46秒もの大差をつけて2連覇を達成。2位には、往路は8位ながら復路優勝を果たした駒澤大が入った。
来期に向けて
本命不在と言われながらも、終わってみれば東洋大が圧倒的な力を見せつけての2年連続総合優勝という結果で幕を閉じた2010年の箱根駅伝。5区で驚異的な区間新を叩き出し2年連続でMVPに輝いた柏原(2年)を中心とする東洋大の強さは本物で、その強さは来期以降も揺るぎそうにない。一方で、今大会では城西大や東京農業大、青山学院大といった予選会組の躍進、3冠を狙った日本大のシード落ちなど、新鋭校や伝統校問わず各チームの力の拮抗を実感させられる大会でもあった。
そして総合優勝を目指した早稲田は、1位とは9分51秒差の7位。今年も悲願の頂点には手が届かなかった。更なる高みを目指すには、ベストオーダーで臨める状況を作ることはもちろん、チームの核となれる『エース』や、今回鬼門となった山の『スペシャリスト』と呼ばれる選手の育成が必要となる。内容、結果共に課題の多いレースとなったが、それでも大串、萩原、北爪など、これまで実績のなかった新戦力の台頭は今後に繋がる明るい材料だ。今回の経験を糧に、高野寛基(スポ3)新駅伝主将を中心としてチーム全体の更なる底上げ、レベルアップを図り、一年間をかけて「真の強さ」を持つチームを作り上げてほしい。来年に向けた戦いは、すでに始まっている
。
2010年第86回東京箱根間往復駅伝競走
復路個人記録
区間 |
氏名 |
学年 |
学部 |
出身 |
個人記録 |
区間順位 |
チーム順位 |
6区 |
加藤創大 |
4 |
スポ科 |
愛知・愛知 |
1.02.13 |
16 |
9 |
7区 |
萩原涼 |
1 |
人科 |
東京・早稲田実業 |
1.06.10 |
6 |
9 |
8区 |
北爪貴志 |
3 |
スポ科 |
東京・早稲田実業 |
1.07.39 |
6 |
9 |
9区 |
中島賢士 |
3 |
スポ科 |
佐賀・白石 |
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14 |
7 |
10区 |
神澤陽一 |
4 |
理工 |
東京・早大学院 |
1.13.11 |
8 |
7 |
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復路 計(順位) |
5.41.57(10) |
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7 |
※当日のエントリー変更:なし
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