2年連続の総合優勝叶わず無念の4位
往路5区・山本修平(スポ1)が芦ノ湖のゴールテープへ飛び込んだのは1位東洋大・柏原が歓喜のゴールを遂げた5分7秒後。1区・大迫傑(スポ2)が自身の前回大会を上回る記録で2年連続の区間賞を獲得するも後続と大差をつけること叶わず、2区で東洋に追いつかれると3区、4区でその差を広げられ、5区に渡った時点では既に東洋の単独首位を許していた。
往路早稲田記録を更新したものの、1位と大差をつけられた早稲田。迎えた復路では、選手一人ひとりがいかに差を縮めるかに焦点が当てられると共に2年連続総合優勝への望みが託された。
熾烈な順位争いを演じた3年生の襷リレー(6、7区)
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初駅伝を区間2位でまとめあげた志方。上級生となる来季は駅伝皆勤と区間賞を狙いたい。
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復路のスタート、6区を務めたのは三大駅伝初出場となった西城裕尭(スポ3)。下りの練習を昨年度から本格的に行っていた西城は1位東洋大がスタートした5分7秒後、ゴーサインと共に勢いよく飛び出した。序盤は3分を切るハイペースで後続の明大を突き放す走りを見せる。しかし、じわじわと前に迫る明大に12.5キロ手前で交わされるとその後は3位に転落。粘りの走りで必死に前を行く背中を追うも、中継所では2位と21秒差をつけられて襷リレー。初の箱根路は区間15位と苦いデビューになった。
順位を一つ落とした3位で襷を受けたのは7区・佐々木寛文(スポ3)。実力者でありながらも度重なるアクシデントにより1、2年次は不出場、今大会が初の箱根となった。走り始めて2キロ過ぎ、4位駒大に先行されそうになるも、次期駅伝主将の意地で先行を許すことなくしばらく並走。3.5キロ過ぎには駒大とともに前を走る明大を吸収し、2位争いを展開した。そして10キロを過ぎると佐々木が集団を抜け出し単独2位に躍り出る。始終凛々しい表情で走った佐々木は最終的に3位明大と13秒差をつけ、堂々の区間3位。しかし先行する東洋大・設楽(悠)の区間記録を上回る快走によって東洋との差は7分50秒にまで広がった。
区間上位の走りをするも差が広がった中盤(8、9区)
8区を任されたのは復路メンバーで唯一の2年生、志方文典(スポ2)。1年前の箱根ではチームの主軸と目されながらも故障により出場を果たせなかった選手である。自身初となる箱根、しきりに沿道に目をやりながら1キロ3分前後の安定したペースを刻む。遊行寺の坂を初めとするアップダウンの多い8区は、例年スタミナのある選手が起用されているが、スタミナだけでなくスピードも持ち合わせている志方。2位の座を守りきったものの、ここでも区間賞を獲得した東洋大に大差をつけられてのリレーとなった。
復路のエース区間、9区には前田悠貴(スポ3)を起用。直前の練習では大迫に先行することもあったというほど絶好調をアピールした前田。「つなぎ」から「エースの一角」へと成長を遂げた。しかしエース区間なだけにライバルも多い。その筆頭が駒大・窪田だ。1キロ3分を切るペースで進む前田の後ろから、中継地点では4位だった駒大がじりじりと追い上げてきた。逃げる前田を追う駒大はみるみるうちにその差を縮め、7.8キロ地点で遂に並ばれる。抜きつ抜かれつのほぼ並走状態で2位を争う両者に変化が見られたのは17キロ手前。駒大が強烈なスパートをかけ、必死に追い上げようとする前田をあっという間に置き去りにして単独2位に。先行を許した前田は中継所に3位で飛び込み、悔し涙を見せた。自身では満足できないながらも区間2位でまとめあげた前田。最高学年となる来季は更なる成長に期待である。
残り10キロで4位に後退、涙の初駅伝(10区)
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初出場でアンカーという大役を果たした市川。今回味わった悔しさは必ず成長の糧となるであろう。 |
1位東洋への逆転はもはや絶望的になったが、2位駒大との差は57秒。早稲田は、2位奪還をアンカー・市川宗一朗(スポ3)へと託した。進学校からの一般入試を経て3年目で箱根の舞台へ。叩き上げの粘りと意地を見せつけてほしいところだ。しかし、市川が中継所から出発した1分13秒差に走り出したのは、明大エース・鎧坂。後ろとの差を気にしつつ、ひたすら前を追う展開を余儀なくされた。前方を走る駒大の背中を捉えられないまま、13.6キロには遂に4位明大に16秒差まで詰められてしまう。そして東洋が優勝を確信し、大手町で校歌を合唱している頃、遂に市川は明大に交わされ、4位に後退。市川も粘るがなかなか逆転ができない。そして市川がゴールへの直線に入った頃、明大が3位でフィニッシュ。その16秒後に市川が顔をゆがめてゴールテープを切った。ゴール後の市川は涙が止まらない。その市川を包み込むように、主将・八木勇樹(スポ4)と主務・福島翔太(スポ4)が支えた。
来季に向けて
春秋のインカレ、三大駅伝での「5冠」を目指した今季の早稲田。インカレでの歓喜とは裏腹に出雲、全日本と昨季のような結果を得ることはできず、「勝って笑って終わりたい」と意気込んだ今大会でも大手町で再びチームの笑顔を見ることなく幕を閉じた。今大会で優勝した東洋大は4年生を中心にチーム全員が各々の役割をミスなくこなした賜物だと言えるだろう。一方、入学当初から勝ちにこだわり続けた早稲田の4年生。主将の八木や駅伝主将の三田裕介(スポ4)らの欠場を全員駅伝でカバーしようとしたが、相手が強すぎたと言わざるを得なかった。
往路、復路ともに昨年度に増してスピードが要求された今大会。それだけに母校の襷を届けられず、涙をのんだ大学もあった。
しかし早稲田には収穫があったはずである。それは今回箱根を経験したメンバーの多くが来年度も残っていることだ。さらに今大会、早稲田はメンバー10名中5名が初の箱根路を経験した。そこで得た課題や悔しさが糧となり、必ずや来年度への原動力となることだろう。
箱根駅伝が終わり、新生・早稲田が誕生する。箱根の借りは箱根で−。来年の箱根では再び強者・早稲田が王座に返り咲きすることを期待したい。
2012年第88回東京箱根間往復駅伝競走
復路個人記録
区間 |
氏名 |
学年 |
学部 |
出身 |
個人記録 |
区間順位 |
チーム順位 |
6区 |
西城裕尭 |
3 |
スポ科 |
東京・早稲田実業 |
1.00.54 |
15 |
3 |
7区 |
佐々木寛文 |
3 |
スポ科 |
千葉・佐久長聖 |
1.03.37 |
3 |
2 |
8区 |
志方文典 |
2 |
スポ科 |
兵庫・西脇工業 |
1.05.23 |
2 |
2 |
9区 |
前田悠貴 |
3 |
スポ科 |
鹿児島・小林 |
1.10.41 |
2 |
3 |
10区 |
市川宗一朗 |
3 |
スポ科 |
愛知・岡崎 |
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9 |
4 |
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計 |
5.33.18 |
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4 |
※当日のエントリー変更:8区臼田(基理1)⇒志方(スポ2) 10区萩原(人3)⇒市川(スポ3)
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