往路では、1区の大迫傑(スポ1)が序盤から積極的な走りでトップで襷を繋ぐと、その流れを引き継ぎ4区まで首位を一度も譲ることなく、レースの主導権を握った。5区では「山の神」東洋大・柏原にかわされるも、その差はわずか27秒。当初の予想をはるかに越える好成績の2位で芦ノ湖へゴールした。そして復路では、いかに早い段階で東洋をかわし首位に立つか、また補欠エントリーされている選手の当日起用に注目が集まった。
初駅伝、初山下りで好発進!(6区)
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6区で圧巻の走りを見せた高野寛基(スポ4)。 今回の58分55秒というタイムは、早稲田新記録。
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復路のスタートとなる6区山下りを務めたのは、最初で最後の箱根路に挑戦となった高野寛基(スポ4)。9月の合宿最終日に渡辺康幸駅伝監督から「山下りをやってみないか」と言われたという。渡辺監督が自信をもって送り出した高野は、その期待に応えるべく1位の東洋大から27秒遅れで勢いよくスタートすると、みるみるうちに東洋大・市川との差を縮めていく。そして8km過ぎ、とうとう市川に並ぶと、その後は互いに譲らず熾烈な首位争いを繰り広げる。ところが15.5km地点で、粘りの走りを見せる高野にアクシデントが発生。左カーブで足を滑らせ、転倒してしまう。しかしすぐに立ち上がると、その後は再び首位争いを展開。そして、両選手の間に変化が起こったのは、下りが終わり平地に入った18km過ぎ。高野がスピードを上げ、市川を離していく。20km過ぎには、自らを鼓舞するかのような雄叫びをあげるなど、最後まで気合いの走りで箱根の山を駆け下った高野は、2位の東洋大に36秒差をつけて7区へと襷リレー。大役を終えると同時にその場に崩れ落ちた高野。上級生の意地の走りは、間違いなく早稲田優勝に向けての原動力となった。
復活とリベンジに懸けた粘りの走り(7、8区)
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8区を担当した北爪貴志(スポ4)。渡辺監督と早実入学に際して交わした『7カ年計画』を見事実現させた。
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高野から襷を受けたのは三田裕介(スポ3)。1年次に7区の裏区間である4区において区間記録を樹立するも、2年次、そして3年次のシーズン前半は調子が上がらず、まさに絶不調の時期を過ごした。しかし昨年11月の上尾ハーフマラソンで健闘し、今大会では復活の走りが期待された三田は、序盤から淡々とペースを刻み、最終的には2位の東洋大との差を1分23秒と大きく広げ、「つなぎの区間」とよばれる7区でつなぎ以上の成果をあげた。
8区を任されたのは、昨年も同区間を走り区間6位という結果を残している北爪貴志(スポ4)。最後の箱根でリベンジを果たしたいところである。コースを知り尽くしている北爪は序盤、1km約3分ペースでまずまずの出だしを見せるが、後方からは2位の東洋大が好ペースでじわじわと差を縮めてくる。北爪の走りに変化が見られたのは8区の難所といわれる遊行寺の坂に差し掛かった時。ピッチ走法に力を入れ、けれども焦ることなく、一歩一歩しっかりと前へ進んでいく。最終的には2位と57秒差のトップで襷を渡し、自身の記録も昨年を約1分上回る66分40秒(区間3位)でまとめ、前回からの確かな成長ぶりを見せた。
大接戦の優勝争い(9、10区)
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優勝のゴールテープを切った中島賢士(スポ4) 個人記録も区間歴代6位の好タイムをマーク。
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北爪から襷を託されたのは3年連続出場となった八木勇樹(スポ3)。1km3分前後のペースを崩すことなく堅実な走りを見せるが、前回大会で7区・区間賞を獲得している東洋大・田中との差はみるみる詰まっていき、20km過ぎにはその差がついに30秒ほどになってしまう。ラストに近づくにつれ八木の表情は更に険しさを増していくものの、最後は必死のスパートで襷リレー。鶴見中継所の時点で2位・東洋大は39秒差までに迫り、2強による優勝の行方はアンカーにまでもつれ込む接戦となる。
頼みの綱、最終区には4年連続出場となった駅伝主将の中島賢士(スポ4)。必死で逃げる中島に対し、東洋大・山本も必死の追い上げを見せる。すると14km過ぎ、とうとうその差が25秒までに縮まってしまう。何度も後方をちらちらと振り返り、山本の姿を確認しようとする中島に、渡辺監督が叱咤激励をすると、その声に応えるように中島も苦しい表情ながらも足取りを力強くする。その後も東洋大の猛追を受けるが、大手町に最初に現れたのは中島。エンジのジャージを身にまとい、肩を組んで「都の西北」を力の限り歌う仲間たち。それを感じ取ったのか、苦しい表情をしていた中島の顔に笑顔が戻る。優勝を確信したガッツポーズ。そして遂にその時がやってきた。18年ぶりの総合優勝、史上3校目の3冠達成、そして待望の渡辺監督の胴上げ。大手町は『Wの嬉し涙』で溢れ返った。
来期に向けて
12月29日、区間エントリーの日に衝撃が走った。主力級の力を有し、5区候補であった佐々木寛文(スポ2)が坐骨神経痛、そしてスーパールーキーで箱根でもその走りが期待されていた志方文典(スポ1)も疲労骨折が発覚。悲願の3冠、18年ぶりの箱根制覇へ危機が訪れたかとも思われた。しかし、主力が抜けても今季の早稲田が掲げるテーマ「全員駅伝」で見事優勝を遂げたその姿は圧巻。1年生のフレッシュな快走、2、3年生の堅実な走り、そして「冬の時代」と言われた4年生が魅せた意地のラストラン。実にバランスの良いチームであった。これから4年生が抜けると、エース矢澤を筆頭に、爆発力を秘めた八木、そして今大会完全復活の兆しを見せた三田といった3年生主体に、新たなチームが本格的に始動する。安定感が売りの2年生にトップレベルの力を持つ1年生。来年の大手町でもまた渡辺監督が宙に舞う姿が見られることを期待したい。
2011年大会は、2区間での区間記録更新、そして往路記録、総合記録が大幅に塗り替えられるなど、非常にハイレベルな戦いとなった。シード権争いは、4チームがゴールまで接戦を演じるなど熾烈を極めた。繰り上げスタートはあったものの、1位の早稲田から20位の日大までが約28分以内に収まった今大会。来季も今大会以上に激しさを増すであろう戦いに、今から目が離せない。
2011年第87回東京箱根間往復駅伝競走
復路個人記録
区間 |
氏名 |
学年 |
学部 |
出身 |
個人記録 |
区間順位 |
チーム順位 |
6区 |
高野寛基 |
4 |
スポ科 |
長野・佐久長聖 |
58.55 |
2 |
1 |
7区 |
三田裕介 |
3 |
スポ科 |
愛知・豊川工業 |
1.04.01 |
2 |
1 |
8区 |
北爪貴志 |
4 |
スポ科 |
東京・早稲田実業 |
1.06.40 |
3 |
1 |
9区 |
八木勇樹 |
3 |
スポ科 |
兵庫・西脇工業 |
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2 |
1 |
10区 |
中島賢士 |
4 |
スポ科 |
佐賀・白石 |
1.09.55 |
2 |
1 |
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復路 計(順位) |
5.29.24(1) |
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1 |
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総合記録 |
10.59.51 |
※大会新 |
1 |
※当日のエントリー変更:7区 佐々木(スポ2)⇒三田(スポ3) 9区 市川(スポ2)⇒八木(スポ3) 10区 萩原(人2)⇒中島(スポ4)
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