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SJの苦難

SJの重要な仕事の一つである取材。確かにそれだけをとってみれば、試合を見るだけと言えるかもしれない。だが、何かの大会ともなると移動があったり、海外の場合だと日本との時差を考えなければならなかったりなど、色々大変なことが多い。仏W杯の裏話を中心に取材についてのお話。

実は取材って大変


パリ・シャンゼリゼ通り
仏W杯決勝後ここに100万人が集まった


 取材に行くって、試合を見るだけじゃないかとお思いでしょうが、W杯なんかですと、毎日試合があるわけですよ。最初開幕戦から1次リーグ最終日まで。1998年のフランスW杯の時は1次リーグが終わって、翌日から決勝トーナメントの1回戦が始まりましたから、3週間毎日休みなくW杯の試合があるんです。しかも、フランスは結構広いですから、そこを毎日TGV(新幹線のようなもの)に乗って移動しながら試合を見るわけです。

 また、試合を見るのにも苦労があるんです。IDカードってありますよね。皆さんあれを持っていると自由に試合を見られるんじゃないかと思っていらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。あれプラス記者席の入場券というのが必要なんです。入場券というのは、最初に取材申請を出すときに希望を書くんですけど、なかなか割り当てが全部こないんです。じゃあ、どうするかというと、プレスセンターに行ってウェイティングリストに名前を書き込んでおくんです。そうすると、実際に取材に現れなかった人の分とか、そういう余った分を回してくれるわけです。

 そのウェイティングリストに書くわけですけど、仏W杯の時はその会場のプレス担当の人の考え方によって渡し方が色々なんですよ。規則では、試合開始1時間前までに来ない人の分を配り始めるとなっているんですが、いつまでたっても最初の割り当ての人が来るのを待っていたり、突然2時間前に配り始めちゃったり、ウェイティングリストの順番に関係なく、目の前にいる人から配っちゃったりと色々な人がいるので、配る人の前にずっといなければならない。ですから試合開始の3時間くらい前までには、プレスセンターに入ります。

 試合が2時間あって、終わってから記者会見とか、あの時は『夕刊フジ』に書いていたので、終わった直後に書く仕事があり、試合終了から3時間。合計8時間プレスセンターあるいはスタジアムにいなきゃいけないわけです。試合が7時からだとすると、全部仕事が終わるのは深夜12時くらいですよ。で、翌日の試合を見るためには、そこの試合のあった町で泊まって翌日の朝早く起きて移動するか、夜行列車で移動して次の試合まで寝るか、そういうことを繰り返すんです。

 毎日繰り返すわけですから、ゆっくり食事をしている時間もないわけですよ。プレスセンターの中には食堂がありまして、そこで不味い餌のようなものを食べなければならない。プレスセンターの食堂に行っても、売り切れていて何も食べるものがなくて、朝食べたきり、翌日の朝まで何も食べられなかったということも実際にありましたし、せっかくフランスに行ったのに、おいしいものを食べた記憶が全然ない。何しにフランスに行ったかというと、ただフランス国鉄に乗りに行った。サッカーを見に行ったのか、鉄道の取材に行ったのかわからないような生活をしなきゃいけないわけですよ。


 この間のアジアカップなんかは、レバノンていうのは幸い小さな国でしたからね。ベイルートからトリポリやサイダに行くのにも2時間ぐらいで行けますから。まあ、楽といえば楽なんですけど。アジアカップの場合毎日2試合やっていましたから、結構疲れます。さすがに僕もこの間、五輪に行って、五輪が終わって日本に帰ってきて、また1週間位でアジアカップに行って、この間帰ってきたばかりなんで、さすがに2つ大会が続くと疲れます。両方出た選手はさぞ大変だったなあと。

 そういうことが現地取材をするとわかるわけですよ。例えばW杯の場合、6月、7月に開かれますから非常に暑いことが多いです。もちろんテレビを見ていれば暑いのはわかりますが、やっぱり試合の時に暑いだけじゃなくて、朝からずっと暑いわけですよ。そうすると、そういうところで何十日も生活をすることの大変さとか、試合をやるにしても見るにしても、非常に緊張しながら生活しなければならないわけで。現地に行って取材をしていると、どういう風に選手たちが大変なのかとか、あるチームが非常に疲れが出ているとか。そういうのがわかるんです。

 この間のシドニー五輪でも、日本は1次リーグが終わってから2日間でブリスベーンからアデレードに移動して、準々決勝をやらなければならなかった。一方のアメリカは1日休養が多かった。これは誰でもわかることですけど、実際に現地にいるとそれがどれだけ大変なことか、距離がどれくらい遠いところとか実感できますから。


 



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原稿は後藤健生氏の許可を得て掲載しています。