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松本の大一番
早慶戦、早明戦・・・・・・。早稲田大学のラグビー蹴球部には、プロもうらやむようなビッグゲームがある。そこでプレーし、そこで活躍した選手にとって、これほど大一番というにふさわしいものはないかもしれない。
公式戦出場経験のない松本の大一番は、3年秋のとある練習試合だという。「目覚めた感じ?」。松本は、話し始めた。対立正大Bとの試合のこと。「あの時期は、すごく自分のことを考えた。下級生でなくなって余裕が出てきたってのもあるけど。自分が出るために何が必要か。何で勝つのか」。熱っぽく自身のことを語り始めた。「自分には大きさも、走力もない。あるのはタックルだけ。夏くらいから意識して練習もしてきた」。そして自身でもびっくりするくらいタックルが決まり始めたという。それがこの練習試合だった。「ウエイトも1年のときからしてきて、その頃がマックスだったし。それで自分には出来るんだ、力があるんだって認識して自信になった」。今までは怖がっていた。名前のある選手、見るからに大きい選手、自身の持つケガ。持っている力を十分に出しきれていなかった。そしてサイドアタックをしかけてくる相手プロップを、仰向けにひっくり返したその瞬間、松本は「目覚めた」と言う。
松本が大一番と言った、自身を知った練習試合。メディアに取りあげられるわけでもない。しかし、自分だけのビッグゲームを語る松本の表情は何とも自信にあふれていた。
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