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   松本兼助 (早稲田大学ラグビー蹴球部)
           
TEXT=坂井裕之


PHOTO=坂井裕之







松本兼助
(まつもと・けんすけ)

第二文学部4年。1976年(昭51)7月19日生まれのO型。175センチ、90キロ。ポジションはプロップ。ラグビー歴は約13年。戸頭中−県柏高−早大

 

#4 松本と仲間

今年度、最初の練習の日、江原組スタートの日。20秒の投げ合い相撲の1本目。松本の鎖骨は折れた・・・・・・。前回の骨折のときのボルトが入ったままだったため、複雑に折れてしまった。松本は今シーズン、20秒しか練習していない。その後の入院、鎖骨の切除、リハビリ。就職活動なども経て、松本がグラウンドに帰ってきたのは9月だった。「居場所がなかった。気まずかった。仲間にそう言われたわけではないけど、戦う集団なわけだから。言ってみればラグビーのできない自分はいらない存在・・・・・・。正直しょげていた」。選手生命を失ってしまった松本を救ったのは、仲間、江原主将の一言だった。

「おまえの力が必要だ。気持ちが切れてないなら、おまえにやってもらいたいことはヤマほどある」。グラウンドで聞いた江原主将の言葉に「あれはヤバかった(笑)、一番うれしかった。時々いいこと言うんだよ・・・・・・」。照れながら松本は言った。その一言で変わった。以前から依頼のあったスクラムの分析の役を受けた。今では、そこが自分の居場所だと胸を張って言うかのように、分析の仕事の話を、プレーの話と同じくらい楽しそうに語る。

 

「勝って泣いたのは、2年の時の早慶戦だけ」。いつもスタンドから眺めていた対抗戦の舞台。松本の目にはど映っていたのか。「自分たちの代表が出ているわけだから、発表会みたいなもんだよ、自分に勝った連中が出てる。だから悔しいとか、疎遠とかいうことはまったくない。いいプレーが出たらすごい沸くよ」。一部の大学スポーツではレベル別の指導などのために、部内での意識の格差、一体感の欠如がある。しかし早稲田のラグビーでは、そんなことは決してな いという。「2年のときは特別(練習が)きびしかった。だから、そこを代表して出ていった仲間が慶応に勝ったときは涙が出た」。

「同じ目的意識の仲間だから」。松本は仲間の話をしながら、こんな一言を言った。少し照れてしまうような、涙が出てしまう江原主将の一言。かつて松本も見ていた「スクールウォーズ」の世界・・・・・・、とまではいかなくとも、熱い仲間との熱い日々を、自分と同じ学生が過ごしている。

普段話しているとき、松本は温厚でやさしい表情をする。こんなに熱い人間だとは、知り合って4年目になるまで知らなかった。体育各部の選手とは、いまは確かに疎遠かもしれない。しかし話してみると、こんなにも豊かな会話ができる。松本のラグビーの話に、私も負けじと新聞・編集の話をする。お互いが知らない世界のことを知ることができる。普段は見られない一面を見ることができる。
私と松本も、「同じ目的意識の仲間」だ。早稲田のスポーツには、よくあってほしい。2人とも心からそう願っている。選手と報道、立場が違うだけだ。私と松本のような熱い会話を、松本とラグビー部の仲間のような熱い日々を。早稲田全体で共有できると確信した。

(完)




 

#1 早稲田と松本

#2 松本の大一番
    
#3 松本の夢
    
#4 友情編
    




 
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