村主 すごいですよね。そういう中でオリンピックで5位っていうのは、すごいですよ。
稲田 そんな状態で5位というのは納得できる感じですけど、自分ではメダルを目標にやってきたので、「満足してるか」と言われたら、やっぱり「メダルが欲しかった」というのはありますね。でも自分の力が出せたなというのはあって。それでも、やっぱり日本に帰ってくるときにどう言われるんだろうと思いましたし。
村主 水泳とフィギュアは違うかもしれませんが、日本の報道ってすごく過剰なところがありますよね。例えば私が四大陸選手権で優勝しましたけど、例えばアメリカの選手は1軍の選手は出てないんですね。世界選手権などをメインに置いているので。でも、2軍の選手でもすごい強いんですよね。中にいる人には分かるんですけど、私なんかも10番の壁をこえるのがすごい大変なんです。でも新聞とかは過剰で、メダルも期待されますし。
――また騙されてました。
村主 みんな「メダルいけるのか」っていうのがあって。で、失敗すると「残念だったね」っていうのがあるんです。でもそんなんじゃなくて。本当にオリンピックで5位とかに入賞できたら、ほんとすごいと思いますよ。
稲田 でもやっぱりオリンピックになると、マスメディアは特別ですよね。本当にそれまで水泳なんて、名前も出ないものなのに。オリンピックになると「だーっ」と、もう攻撃されるような感じ。
村主 すごかったですよね。選考の問題とかも。
稲田 そうですね。
村主 オリンピックの年って水泳はすごいですね。
稲田 周りがそうなっちゃうと、自分にオリンピックはそういうものなんだっていうのができてきてしまいますね。うちのコーチもコーチで、鈴木大地さん(ソウル五輪金メダリスト)のコーチだった方で、オリンピックにはすごい特別なものを感じているんです。今まではなあなあなのに、急に「がーっ」とくるんで、それで私もそれに便乗してかないと、という感じなんです(笑)。同じ4年に一度の大会でも、それがもし世界選手権だったら、「次にオリンピックがあるからいいや」って感じになれますけど。
村主 世界選手権って4年に一度あるんですか?
稲田 今度から2年に一度になるらしいんですけど。ほかの試合なら諦められるというのがあるんですけど、オリンピックは、どん底でも決して諦められない場におかれる感じで。それで、自分もどん底でしたけど、先生を信じて頑張ろうという感じでした。だめだけどしょうがないんだ、と。
村主 「諦めないで頑張るかー」ですね。
稲田 やっぱそこでオリンピックは違いました。村主さん気をつけないと。
村主 そうですね。ほんとうに不思議なんですけど、毎年の合宿で、いつもは絶対取材なんてこないのに、オリンピックの年だけ、「取材はひとり何分です」とか言ってやったんですよ。今思えば、あんなこと絶対ないはずなのにってことがあるんです。フィギュアって、冬のスポーツの華みたいなとこがあるから、それこそ本当にオリンピックの年だけで、あとはもう「さようなら」っていう、感じがあるから(笑)。
――マスコミはメジャーというか、もうかる時にもうかる所しか追いませんからね。
村主 でもメジャーは本当にうらやましい。ニュースでも野球・相撲・サッカーという感じですよね。フィギュアなんて全然やらないじゃないですか。でもアメリカとかカナダでは国技だから、本当にすごいんですね。日本のメジャーと同じような扱い受けていますから。「日本でもすごくメジャーになってほしいな」というのはありますね。だったらオリンピックになったからって、大騒ぎすることもないですよね。
――水泳なんかは、シドニーが行われたオーストラリアがそういうところですよね。
稲田 超満員で。会場の一番上は見えなかったですね。
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